今の時代に求められる管理職とは

いまや、個人で、「自分の健康は自分で守れ」という時代から、会社にも「社員の健康にある程度責任がある」という時代にシフトしつつあります。
現在、渇望される管理職像とは?

「健康経営」の時代へ

「社内うつ」といった言葉が社会で認知され始めたように、職場が原因で心を病む人が後を絶たない時代になりました。
日経ビジネスの調べでは、今年4月23~30日までの8日間、「職場のメンタルヘルスに関する調査」(有効回答数1103件)を実施。不特定多数のビジネスパーソンに直接、「仕事上のストレス」に関する質問に答えてもらったところ、結果は以下の通りとのことです。
「過去、仕事が原因で体調を崩し、医師による何らかの診断が下されたことがあるか」との問いに対し、「ある」と回答したのは34%。
その内訳は「メンタル面で体調を崩した」(16%)、「フィジカル面で体調を崩した」(9%)、「メンタルとフィジカルの両方で体調を崩した」(9%)。
厚生労働省も、「うつ」など のメンタルヘルス不調を未然に防止するため「労働安全衛生法」という法律を改正し、2015年12月から、労働者が 50 人以 上いる事業所で、毎年1回、検査を全ての労働者に対して実施することを義務付けました。

いまや、個人で、「自分の健康は自分で守れ」という時代から、会社にも「社員の健康にある程度責任がある」、という時代にシフトしつつあります。
会社にとっても、健康な社員がいてこそ、はじめて成長し、競争力を高めることができる、そんな「健康経営」を考え、取り組むことが必要な時代になってきています。
チームの一員である、部下が健康な精神状態で働けないということは、そもそもチームとして、目標実現が難しくなることにつながります。例えば営業部であれば、1名がそのような状態に陥れば、当然ながら、一人分の売り上げは落ちますし、また、周囲にも影響するでしょう。商品開発部であれ、経理部であれ、同じことです。

では、どうすれば、社員が健康に仕事に取り組めるのか?

「労働時間」や「成果主義の浸透」がストレスとなっているという意見もありますが、2013年のデンマークのAarhus Universityの博士が4500人を対象に行ったリサーチ結果では、ストレスホルモンのコルチゾールも測定し、「職場でうつ病を引き起こす要因となっているのは、仕事量や仕事へのプレッシャーよりも、むしろ上司の部下の接し方」という発表をしています。つまり、「上司の部下へのコミュニケーション」が課題であるということです。

上司(管理職)になると、以前までのプレイヤー時代とは全く違う役割が求められます。最大の役割は、チームの力を最大化するために、環境を整えることにあります。自分個人の成績が良ければ、それで良いというわけにはいきません。部下を動機づけし、巻き込みながら、一つの方向にチームを導くことが要求されます。
それでは、今求められる上司とは、どうあるべきなのでしょうか?


部下の自己効力感を高める上司へ

個人差があるにせよ、20,30代を中心として、心の折れやすい部下が増えているという方がいます。
上司から言わせれば、何か叱れば、或いは、注意すれば、すぐにむくれる、機嫌が悪くなる、やる気がなくなる、さらには、出社しなくなる、という体験があり、本当にどう接してよいかわからず、困っている、という声をお聞きします。

一体、何が、上司(管理職)世代とは違うのでしょうか?

一説には、叱咤激励され、厳しいことを言われ成長してきた上司世代と、そもそも周囲に受け入れられることを当たり前だとし成長してきた部下世代という違いがあるとする見方もあります。
受け入れられるのは、当然であるため、叱られた経験がない、また、叱られると自分の人格まで否定されたかのように感じる若者もいます。
心が折れやすい人の特徴としては、自尊心が高いが、実は、自分に自信がない方が多く、叱られると心に傷を負ってしまうというケースが非常に増えています。
厳しく叱ることによって成長する人も、もちろんいますが、叱られることを否定されると感じ、上司の言葉を受けいれることができない若者が増えています。

それでは、上司はどうすればよいのでしょうか?

その鍵は、部下の自尊心を尊重し、自己効力感を高めるコミュニケーション方法を知ることです。それは、カウンセリング的な手法かもしれませんが、何も、カウンセラーのように専門家になるまで深く勉強する必要はありません。上司としてマネジメント力の一つとして捉え、必要となる効果的なコミュニケーション手法だけを身につければそれで、十分だと思います。
また、部や課には、それぞれ目的、目標があります。部下にそれを理解してもらうことも大切です。とはいえ、組織の目標を強制的に理解させるというよりは、部下自らが、内発的に目指す目標とシンクロすることできれば、良いでしょう。
「目標が見えない」ということが原因でストレスを感じる人も多くいますので、目標のすり合わせは、極めて重要です。しかし、それが、他人に強制されたものであれば、当然ながら、やる気も半減ですが、自分で創造したものであれば、動機づけされ、その結果も良くなりやすくなります。

つまり、上司は、チームの目標という方向性をもちつつも、部下との対話では、こちらから、指示、命令するのではなく、部下が、自分で考え、自分で答えをみつけるというプロセスを大切にし、内発的な目標を定め、アクションを起こせるように促すコミュニケーションをとることができれば、結果として、部下の精神状態は安定し、本人のやる気が増し、チームの業績も期待できのではないでしょうか?

そんな職場コミュニケーションスキルをもつ上司のことを、「動機づけ型カウンセリングマネジャー」と呼ぶことにします。
では、それは、どんなコミュニケーションスキルでしょうか?


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